Hippocratic AI Inc. (ヒポクラティック・エーアイ) ■技術の分野:メディカルAI ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2023年 ■社員数:約50名(2024年11月現在:LinkedInより) ■所在地:167 Hamilton Ave Palo Alto, CA, 94301 ■URL:www.hippocraticai.com ■主な経営陣 Munjal Shah氏(共同設立者およびCEO)、Vishal Parikh氏(共同設立者およびCPO)、Meenesh Bhimani氏(共同設立者およびCHIEF MEDICAL OFFICER)、Subho Mukherjee氏(共同設立者およびCHIEF SCIENCE OFFICER)、Saad Godil氏(共同設立者およびCTO)他。 ■最近の資金調達状 2024年9月に完了した最新の投資ラウンドでは53万ドルを確保。また、NVenturesのリードによりGreycroft、Leo Shapiro of 7Wire Ventures – contが参加して170万ドルの追加投資も調達した結果、総額にして1億3700万ドルを調達。同社における評価額は5億ドルと査定されている。 ■事業および技術概要 医療業界における安全性確保に注力した大規模言語モデル(以下LLM)を開発。医師をはじめ医療機関の管理者、メディケア専門家、人工知能研究者らがそれぞれの専門知識を貢献して設立された。ChatGPTやGPT-4といったLLMや基盤モデル(FM)に強い関心が寄せられる中、医療業界に特化した商用のAIモデルを構築したのは同社が業界初であると言われ、認証、医療専門家によるRLHF、ベッドサイドマナーに重点を置き、安全性を追求したLLMの構築を目指している。高齢化が進む日本でも類似した傾向がみられるように、米国でも医療機関における人材不足は深刻な問題のひとつである。同社技術はこうした課題への対応策として、生成系AIによる音声を通じた対話型のAI医療スタッフソフトとして展開。音声を経由し患者との信頼関係を構築するため、同社技術では主要エージェント(患者との基本的なコミュニケーションの円滑化を図る)と異なる状況に対応する専門エージェント(専門分野における知識を活用)の連携を通じて患者への支援を行う。例えば、主要エージェントと患者間でスタートした会話が服薬量など具体的な質問に移行した際には、薬剤師などの専門エージェントが支援に入る仕組みになっている。同社のLLMでは実際の人間によるフィードバックを活用してAIを生成するRLHFを採用。技術の構築にあたっては、医療専門家に介在してもらい、LLMの回答を評価することで指導と訓練に役立てている。 Tofu Technologies, Inc.(トーフー テクノロジーズ) ■技術の分野:AIソリューション(B2Bマーケティング) ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2023年3月 ■社員数:10名未満(2024年10月現在:LinkedInより) ■所在地:San Francisco, CA ■URL:https://www.tofuhq.com/ ■主な経営陣: Elaine Zelby氏(共同設立者)、Eunjoon Cho氏(共同設立者およびCEO)、Honglei Liu氏(共同設立者およびCTO)他。 ■最近の資金調達状況: 2023年10月19日に完了したシードラウンドではIndex Venturesが牽引し、他にSignalFire、Stage 2 Capital、Liquid 2 Ventures等の投資機関も参加した結果500万ドルを調達。 ■事業内容および技術の特長: 同社開発の生成AIプラットフォームは、競争の激化が加速化するB2Bマーケティングの領域において、社内で収益向上を専門とする部門が直面している課題、殊にリソースの制約によって個人化されたコンテンツ作成の煩雑さの解決を目指す技術である。同技術は、マーケティング部門において、多岐に渡るチャネルに対応したパーソナルコンテンツの大量生成を可能にするもの。それぞれの顧客に応じてカスタマイズされたPlaybook(AIナレッジグラフ)を生成し、そのウェブサイトやマーケティング、販売に関連したデータを取り込み、ブランドをはじめメッセージング、ポジショニングとの整合性を確立させる。これをベースに生成AIを通じて、eメールやランディングページ、ブログ投稿、ホワイトペーパー、ケーススタディといった個人化されたコンテンツについて無制限のバリエーションを生み出すことができる。カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とする同社は、Google、Facebook、Affirm等の大手企業においてB2BマーケティングおよびAI開発で主要な役割を担った経験豊富な人物らが共同設立。起業から一年半余りと若く零細ではあるが、導入企業の間では、同社技術を通じたハイパーパーソナライゼーションにおける大きなROIが報告されており、今後の成長ぶりに着目する価値がある。 Endor Labs(エンドーア・ラブズ) ■技術の分野:ソフトウェア(セキュリティ) ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2022年 ■社員数:約70名(2024年8月現在:LinkedInより) ■所在地:Palo Alto, CA ■URL:https://www.endorlabs.com ■主な経営陣: Dimitri Stiliadis氏(共同設立者およびCTO)、Varun Badhwar氏(共同設立者およびCEO)、Damien Michau氏(VPエンジニアリング)、Andrew Davidson氏(VP事業開発)他。 ■最近の資金調達状況: 2023年8月、Lightspeed Venture Partnersの主導によりCoatue、Dell Technologies Capitalなど複数の投資機関が参加した結果、シリーズAの投資ラウンドで7,000万ドルを調達したと公表。 ■事業内容および技術の特長: 昨今の企業各社においては、オープンソフトを利用したソフトウェア開発が主流とされるが、その一方でソフトウェアサプライチェーンの安全性確保に関する課題も浮上している。Endor Labs社では、現在一般公開されている多数のオープンソースコードを解析し、企業のセキュリティチーム向けに安全かつ効率性の高い最適な開発環境の提供を目指している。近年のアプリケーションでは使用されるコードの大半が、開発者とは別の人物やAIによって書かれているため、その品質レベルや安全性を見極める必要性が依然にも増して重要視されている。同社ソリューションにおける特長には以下が挙げられる:①開発者側が信頼性の高いオープンソースソフトウェアを選抜できるようポリシーエンジンを提供。大規模なクラウド上のDBを活用し、多数のオープンソースライブラリーを常時走査しながら、それぞれのチェック項目におけるスコアリングを実行する。②既存のセキュリティツールでは、誤検知やアラートに随時対処しなければならず、開発者の労力と時間の浪費に繋がる。同社技術ではコードそのものを走査・解析するため、他のセキュリティツールが通知するアラートの大半を削減できる。③コードはGitHubやGitLabのリポジトリで統括され、CI/CDパイプライン経由で本番環境に展開される。パイプラインの状況を把握しながら可視化を引き上げ、問題発生時にアラートを送信する。特にこの点は、非効率な作業を生み出すノイズを大幅に削減するものとして、競合技術との差別化を図っている。 ■今後の展望やビジネス機会: 零細なスタートアップからBroadcom等の大企業に至るまで既存の顧客ベースは幅広いが、今後1年間に関しては北米での営業拠点に注力しながら、欧州市場を皮切りにオーストラリア、日本、ニュージーランド等アジア太平洋地域への進出にも乗り出していく意向を示している。 Windfall Bio(ウインドフォールバイオ) ■技術の分野:バイオテクノロジー ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2022年 ■社員数:10~50名(2024年6月現在:LinkedInより) ■所在地:Menlo Park, CA ■URL:https://www.windfall.bio/ ■主な経営陣: Josh Silverman氏(共同設立者およびCEO)、Jordan Smith 氏(VP of Engineering)、Frank Crespo氏(共同設立者およびCOO) 他。 ■最近の資金調達状況: 2024年4月に完了したシリーズAの投資ラウンドでは、Prelude Venturesが牽引しClimate Pledge Fund、Global Brain、Incite Ventures、Positive Ventures、B37 Ventures、Breakthrough Energy Ventures、Mayfield、UNTITLEDなど新規・既存の投資機関が参加する形で2800万ドルを調達。同社によると、今回の調達資金はメタン集約型産業を対象とした試験的なソリューションの展開を拡大させる他、世界規模での顧客ベース増加を目指した人材確保、生産活動とサプライチェーンの強化に運用していく方針。 ■事業内容および技術の特長: 地球温暖化の抑制を目指し、短期的に効果を発揮できる対策として近年、メタン排出量の急速な削減に注目が寄せられている。農業をはじめ化石燃料の生産、輸送、石炭採掘や埋立地などの活動から排出されるメタンは強力な温室効果ガスであり、二酸化炭素に比べ80倍もの温暖化に影響を与えてる。カリフォルニア州メンローパークを拠点に2022年に設立された同社では、土壌中に存在するメタン酸化細菌群(methanotrophs)を利用し、大気中の様々なソースからメタンを回収し、窒素肥料を製造する技術を提供している。同社技術の活用により、農業はもとより石油、ガスから廃棄物管理に至るまで広域な産業においてメタン排出量の削減が期待できると同時に、農家にとっては肥料コストを抑え、有機肥料の販売による収益向上、自然環境に対する侵害や悪影響の低減にも繋がるとされている。 Contextual AI(コンテクチュアルエーアイ) ■技術の分野:基盤AI ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2023年 ■社員数:約10名(2024年4月現在:LinkedInより) ■所在地:Palo Alto, CA ■URL:https://contextual.ai/ ■主な経営陣: Douwe Kiela氏(共同設立者およびCEO)、Amanpreet Singh氏(共同設立者およびCTO)他およそ10名の社員。 ■最近の資金調達状況: 2023年6月、ステルスモードから逸脱し、Bain Capital Ventures(BCV)の牽引によりLightspeed、Greycroftをはじめとする多数のエンジェル投資家が参加したシードラウンドで2,000万ドルを調達。 ■事業内容および技術の特長: Facebook AI Research(FAIR)とHugging Faceの出身者らが共同で設立した企業向けAIの開発企業。両者はそれぞれMeta Platforms の FAIR におけるヘイトスピーチ(人種、出身国、宗教、性的指向、性別、障害などに基づいて個人または集団を攻撃、脅迫、侮辱する発言や言動のこと)や Facebook で不正販売の商品を検出するシステム、LLMの開発に携わっていた。同社開発の「ASI:Artificial Specialized Intelligence」はLLM を活用したい企業が抱える様々な課題解決に焦点を当てた技術である。既存のLLMに関しては、将来における革新性に注目が寄せられている一方、捏造による結果を生成したり、知識ベースの変更が複雑であるなどの制限があることから、企業によってはLLMの導入を躊躇するところもある。Meta社でRAG(retrieval augmented generation)の研究活動を主導した同社CEOのKiela氏は、自身の経験を生かし企業向けのテキスト生成AIを考案した。RAGはLLMに外部ソース(ファイルやWebページ等)を付加させLLMの性能向上を図るもの。インクアリに対しては外部ソースから関連するデータを検索し、そのデータをインクアリとパッケージ化してLLMに供給する。その結果、文脈を考慮した応答が生成されることから、従来のLLMよりも精度と信頼度が引き上げられる。RAGはLLMのカスタマイズやアトリビューションの問題に対応することにより、反復学習や微調整を回避しながら性能向上が期待できる。小規模かつ効率的な言語モデルの開発が実現され、レイテンシーとコスト削減を図るなど企業の要求を満たす統合型のソリューション提供が可能となる。同社によると、パイロットプロジェクトの実施に関して、現在フォーチュン500社に挙げられる企業と話し合いの段階にある。現時点での競合にはLlamaIndex社などがある。 ArteraAI(アーテラエーアイ) ■技術の分野:メディカルAI ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2023年 ■社員数:101~250名(2024年2月現在:LinkedInより) ■所在地:108 1st St, Los Altos, CA ■URL:https://artera.ai/ ■主な経営陣: Andre Esteva氏(共同設立者およびCEO)、Felix Feng氏(共同設立者)、Tim Showalter氏(Chief Medical Officer)、Adriana Vela氏(VP of Medical Affairs & Operations)、Nathan Silberman氏(VP of Machine Learning)他。 ■最近の資金調達状況: 2024年2月、Prosperity7 Ventures、シンガポールを拠点とするEDBI、Walden Catalyst Ventures、Wilson Sonsini Goodrich & Rosati、Trium Ventures等の投資機関に加えNavin Chaddha、Rajiv Khemani (AISpace VC)、Andrew & Elliott Tan(A&E Investment LLC)の参加により追加で2000万ドルの資金を調達。最新ラウンドによる投資は海外市場への参入や研究開発活動の推進に運用される方針。これを機に、設立から一年未満の間で総額にして1億1000万ドルの投資を確保したことになる。 ■事業内容および技術の特長: ArteraAIではMultimodal Artificial Intelligence(MMAI)を利用し、癌の可能性を予見するための試験サービスを開発。現在提供しているArteraAI Prostate Testでは、患者の生体検査から抽出したデジタル画像と臨床データを統合分析させ、個々人に適切な治療方法を高い正確度で予測する。男性の間で発症率の高い局所前立腺がんに対応した業界初のAI技術として注目を集めており、医師における治療手段の意思決定に役立てられている。同社技術におけるメリットは、医師が患者ごとに最適な治療方法を提案することが可能になり、治療効果を最大限に引き上げると共に、不要な治療や投薬による副作用のリスクを軽減できる点にある。一方、こうしたアプローチにおいては、個人データにおけるプライバシー保護やAIの判断基準の透明性に対する懸念が存在する他、医療現場における当事者の教育、AIの判断を補完するための臨床データの充実等が不可欠となる。長期的な視点で見れば、こうしたAI技術の進展と普及により、様々な癌治療の様相が変革し、幅広い範囲で最適な治療方法が提供されることになる。治療の迅速な開始や効果向上はもとより、それに関連した医療費の削減も期待できる。現在は癌を対象としているが、将来的には他の疾患にも応用できる可能性がある。 Kumo.AI(クモドットエーアイ) ■技術の分野:SaaS AIプラットフォーム ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2021年 ■社員数:約30名(2023年12月現在:LinkedInより) ■所在地:357 Castro Street, Suite 200 Mountain View, CA, 94041 ■URL:https://kumo.ai ■主な経営陣: Vanja Josifovski氏(共同設立者およびCEO)、Jure Leskovec 氏(共同設立者およびChief Scientist)、Hema Raghavan氏(共同設立者およびVP of Engineering)、Tin-Yun Ho氏(VP of Product)他。 ■最近の資金調達状況: 2022年4月、シリーズAの投資ラウンドで1850万ドルを調達。続く同年9月1800万のシリーズBラウンドではSequoia CapitalのリードによりA Capital、SV Angel、Ron Conway、Michael Ovitz、Frank Slootman、Kevin Hartz、Clement Delangue、Michael Stoppelman等多数の投資家が参加した結果、1800万ドルの出資を受けたと発表。現在、同社の評価額は1億ドルに到達したとされている。同社は、最新ラウンドの調達資金は、雇用者の増加、法人への導入拡大、技術とサービスの向上に向けた研究開発活動に運用していく方針。 ■事業内容および技術の特長: スタンフォード大学の教授であったJosifovsks氏が主導し、ドイツのドルトムント大学との共同研究で開発された「グラフ・ニューラル・ネットワーク」では、不正検知や消費者行動、マーケティング戦略に関わるデータを複雑なグラフネットワークとして見なし、予測するための機械学習を目的とする。同社では、このネットワークの学習に対応するオープンソースツール「PyG」を開発。リソース不足で独自ツールの開発に手が回らない大手IT企業でも、PyGを基盤としたKumoのソフトウェアを活用することで、ビジネスデータを利用した複雑な予測モデルを簡単に構築することが可能になる。同社によると、このPyGは本来、データアナリストやデータサイエンティストを対象にデザインされたものであるが、簡素性が高いためこうした専門知識を持たない社員でも利用できる。同社より遥かに規模の大きいDatabricks、DataRobot、Dataiku等は一足早くデータサイエンスの収益化に成功しているが、Kumoでは差別化を図りながらこれらの企業と競合としていくことが予想される。 Mitra Chem(ミトラケム) ■技術の分野:リチウムイオン電池 ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2021年 ■社員数:11名~50名(2023年11月現在:LinkedInより) ■所在地:1245 Terra Bella Ave, Mountain View, CA 94043 ■URL:https://mitrachem.com/ ■主な経営陣: Vivas Kumar氏(共同設立者およびCEO)、Chirranjeevi Gopal 氏(共同設立者およびCTO)、William Chueh 氏(共同設立者およびChief Scientific Advisor)他。 ■最近の資金調達状況: シリーズAの投資ラウンドを2021年11月に完了させ、続く2023年7月のベンチャーラウンドを確保した後、同年8月にはゼネラルモーターズが牽引する シリーズB(総額6,000万ドル)ではその初回投資に当たる4,000万ドルを調達したと公表。 ■最近の資金調達状 2021年、シリコンバレーで起業されたMitra Chemでは独自の AI機械学習アルゴリズムを利用し、輸送をはじめ家電、住宅、商業、グリッドスケール蓄電など幅広い用途におけるLFP電池向けの正極材料を開発。LFP電池に比べエネルギー密度を遥かに引き上げることが可能な高容量かつ低コスト次世代正極材用に取り組んでいる。同社の鉄を利用した正極製品は、近年、北米におけるリチウムイオン電池メーカー各社が直面するニッケルやコバルト等の元素利用に伴う供給不足、採掘の将来性懸念に対する課題への対応策として考案されたもの。Mitra Chem製品における最大のメリットは、研究活動から実際の市場展開までの期間を9割以上も短縮できる点にある。さらに同社は鉄を利用した正極メーカーとしては米国内で唯一の企業であるため、国内生産によるEVの購入者らがインフレ削減法の適用された税額控除の対象となる可能性も示唆されている。 Andes Ag(アンデス アグ) ■技術の分野:バイオテック ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2018年 ■社員数:11名~50名(2023年8月現在:LinkedInより) ■所在地:1210 Marina Village Pkwy Alameda, CA 94501 ■URL:https://www.andes.bio/ ■主な経営陣 Gonzalo Fuenzalida氏(共同設立者およびCEO)、Tania Timmermann氏(共同設立者およびCTO)、Bjorn Traag氏(CSO)、Anupam Chowdhury氏(Head of Technology)他。 ■最近の資金調達状 2023年3月、シリーズAの投資ラウンドで3000万ドルを調達。今回のラウンドにLeaps by Bayer、Cavallo Ventures、Germin8、Yamaha Motor Sustainability Fundほか複数の投資機関が参加。これを契機に調達資金の総額はおよそ5600万ドルに達した。 ■事業および技術概要 自然環境におけるC02の削減を目的に、有益な微生物技術の研究に取り組むスタートアップ企業。2018年、2人の共同設立者が起業したAndes Ag(以下Andes)では、広大な農地に存在する微生物を使って大気中のCO2 を採集し、ミネラルに転換させることでグリーンハウスのガス容量削減を図る研究活動を展開してきた。同社では、トウモロコシや小麦など植物の種子と微生物を効率的に融合させ、これらを土壌に追加。ここで利用された微生物は、種子の根と共に成長を図りながらCO2におけるミネラル転換を加速化させる。また、降雨時には、これらのミネラルが土壌の深層部へと自然に沈殿することで、土壌の栄養成分が向上される他、排水を助長しながら、植物にありがちな病気の予防にも繋がる。さらに、実施される土壌調査によって検証されたCO2削減によるカーボンクレジットを生成することが可能になる。 ■環境問題への対応に関連したバイオテック企業の展望: 米国の陸地に関しては、約52%が農業に特化している事実を踏まえ、近年においては環境科学の領域へ強い関心を示す投資家が増えている。中でも、Andesが展開しているCO2の削減を目的としたバイオテックの領域はシードステージの投資として殊に注目を集めている。昨年の例を挙げると、同分野のスタートアップ企業Lithos Carbonでは、630万ドルの出資を受けている。Andesの技術における最大の特長は、種子に微生物を融合させるといった非常に簡素な手法を展開することで、農家が従来通りの作業を全く変える必要がない点にある。農家にとってはこうして簡単に利用でき、成果も期待できることから、今後、幅広く普及していく可能性が考慮される。 Instabase(インスタベース) ■技術の分野:AIソフト ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2015年 ■社員数:約350名(2023年6月現在:LinkedInより) ■所在地:855 Oak Grove Ave, STE 200, Menlo Park, CA 94402 ■URL:https://instabase.com/ ■主な経営陣 Anant Bhardwaj氏(CEO)、Sumeet Gajri氏(CSO)、Steve Jenner氏(CCO)、Clements Mewald氏(Head of Product Management)他。 ■最近の資金調達状況 2023年6月、ラウンドCで4500万ドルの出資を調達。Tribe Capitalの主導による同ラウンドにはAndreessen Horowitz、New Enterprise Associates、Spark Capitalも参加した。これにより、総額で1億7700万ドルの資金を確保したことになる。また、今回の投資ラウンドを契機に、同社における評価額はそれまでの10億ドルから倍増の20億に引き上げられた。 ■事業および技術概要 Bhardwaj氏がMITでの博士課程に在籍していた2015年、企業におけるアプリとデータを迅速に構築・展開させる市場にビプラットフォームにビジネス機会を見出し同社を設立。同社技術では、大規模なコーパスファイルのクエリーを通じて、学術文書や法文書、財務書類など企業の業務で利用可能な書類やデータの一括処理を実行する。この他、類似した種類の文書を解析するためワークフロー展開用のツールも搭載。導入企業では、収支手続きを自動化したり、認証処理をはじめ請求処理や受領の承認等の確認を行うこともできる。現在、競合には大手のGoogle Cloud、Amazon Web Services、Azureが存在するが、上述のBhardwaj氏によると、同社技術では時間、コスト、労力を余儀なくされるデータサイエンスの仕事を最小限に抑える点で差別化を図っている。同社の報告によると、現在、米国内トップ5行の銀行のうち4行で導入実績がある。幅広い業界で利用できるが、中でも大量の書類手続きが必要な政府機関やヘルスケア、病院、保険、消費者向けパッケージ商品等の産業で有効活用されている。 |