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信頼関係の土台は率直さと認め合う気持ち
折居 章雄氏
KDDI Labs USA, Inc.
VP, Marketing & Business Development
日米間における自己表現の違いについては、日本をハイコンテクスト文化(high-context
culture:状況依存度が高い)、米国をローコンテクスト文化(low-context
culture:状況依存度が低い)という観点から説明されることがある。単一民族国家である日本では、人々の生活習慣や文化的背景、経験に類似する部分が多いため、敢えて明確な表現を避け、与えられた状況の中から物事の真意を「察する」、そして相手も「察してくれる」という公式が自然と成立する。そして、この「察する」能力を持つことが、日本人同士でのコミュニケーションにおいては、思いやりをもって相手を理解するための大事な要素なのだ。これとは反対に、多民族国家に代表される米国や欧州諸国は、宗教や先祖の歴史的背景、教育環境の在り方が多岐に渡るため、個々人が独自性を尊重し、それを主張する傾向がある。ローコンテクスト文化では、自身の考えや意思を相手に「明確に伝える」能力を示すことが、自分という人間を知ってもらい、相手の立場を理解する上で不可欠な行為であり、これが信頼感を生み出すことにも繋がる。理論上は簡単そうだが、こうした概念の違いは、実際の経験と共にそれを吸収していく努力をしてはじめて理解されるものだ。
今回、Bridge Builderでお話を伺ったKDDI Labs USA,
Inc.(シリコンバレー)の折居 章雄氏(VP, Marketing & Business
Development)は、ご自身の豊かな経験を通じて、こうした概念の違いを米国でのビジネスでうまく実践されている。特に、異文化の人間同士が協働する際に忘れてはならない原点は、同氏の「信頼関係は先ず互いを認め合うことから」という考えに凝縮されている。
Q1. 最初にアメリカへいらしたきっかけと、KDDI Labs USA,
Inc.での現在の役割について教えください。
A1.
最初にアメリカに来たのは、1993年の5月です。旧KDDで、法務部門を経て、国際データ通信サービスの企画・計画をやっていた部署から、当時のKDD
AmericaのSF支店への転勤となりました。KDD
Americaは、1985年に始まった日本の通信市場開放政策によって外国通信事業者による相互市場参入が顕著になりつつあったことを受け、60年代から存在したKDDの駐在員事務所数拠点を、1989年に米国法人として統合設立したものでした。法人設置から4年余りを経過していましたが、米国での独自のサービス導入には至っていない段階だったことから、NY本社と協力し、また、NY勤務を経て、米国政府への免許申請、アメリカ通信事業者とのアライアンス構築等、順次米国でのサービス導入に携わって参りました。
本年4月から、KDDI研究所の100%現地法人である、KDDI Labs USA,
Inc.において、マーケティング及び事業開発担当として、勤務しています。KDDI Labs USA,
Inc.は、1999年に開設され、当初は、米国、特にシリコンバレーの最新技術情報を調査の上日本へフィードバックする役割が中心でしたが、現在は、主に次の3つを主要活動領域としています。1つ目は研究開発活動で、KDDI研究所の研究活動に対する支援及び当社独自の当地での研究開発活動からなります。Stanford、UC
Berkeley 、US David
、UC Santa Barbara等の大学とも多岐に亙る共同研究を行っています。KDDI Labs
USAとしての独自の研究開発活動の中では、特にNetwork
Security、IPv6等の分野で成果を挙げつつあり、KDDIのグローバル通信サービスのさらなる付加価値化に寄与することを目的としています。2つ目は、調査活動であり、米国の最新技術・市場動向の調査を行っています。KDDI本社やKDDI研究所をはじめとするグループ会社から依頼のある固有テーマについて堀り下げることに加え、KD当社独自の活動として、やはりKDDIサービスの高付加価値化に直結する技術やサービスについての詳細調査を行っています。3つ目は、営業支援活動であり、KDDI研究所が有する多様な開発技術を、日本市場のみならず、米国市場にも浸透させるべく、NABへの出展等を通じて、活動を行っています。
Q2. 近年、御社で最も力を入れている分野や研究の対象はどのようなものですか?
A2. KDDIは、”Ubiquitous Solution
Company”を標榜しており、固定網からワイヤレス網、音声からデータまで、すべてを一元的に提供しています。そのような観点からは、コア技術となるブロードバンド技術、コンテンツ配信・管理技術、IPv6、セキュリティ技術、ワイヤレス技術等、広範な内容が我々の対象分野となります。当社が持つ独自技術とのシナジー、さらには米国で生まれた最新技術を有する会社との共同研究・開発等、多くの局面で米国企業との関わりが生まれています。新技術を日本市場にて展開することを企図している米国企業に対しては、たとえば当社のインフラを用いて事前検証のための実験を行い、その結果に基づいて必要な技術提案や、場合によっては共同開発を行って、より実態に即したものとして日本へ導入してもらえるように協力することも行っています。
現在当社には、アプリケーション分野の専門である所長、ネットワーク技術分野の専門である副所長と2人のPh.Dがおり、主に分野毎に分担をしていますが、そこに米国通信業界での10年余りの実務経験を持つ私がジョインしてビジネス分野で多面的にサポートすることによって極めて良好なチームワークが出来上がり、現在多くの研究機関、企業、大学等と多くの案件に携わっています。今後も、上記の重点項目に関連する新たな企業等との連携を生んで生きたいと考えているところです。
Q3.
アメリカでは10年近くの業務経験をお持ちですが、ビジネス文化における日米間の違いや類似点については、どのように感じられますか?
A3.
先ず差異についてですが、よく言われるとおり、アメリカにおいては良くも悪くもYes/Noを明確にすべきことが求められます。お互いの信頼関係や能力・知識・実績を認め合う関係が構築されている限りにおいては、”No”を明確に伝えたとしても、それをもって直ちに関係が悪化することはないと思いますし、むしろ率直なもの言いを行うことによって、相手の時間その他の有限リソースの浪費を避ける努力が必要であると痛感しています。KDDが一時期出資をしていたアメリカの通信会社に出向していた時期がありましたが、日本人ひとりでその会社の新規事業計画と市場への新サービス投入に関与し、小規模ながらもアメリカのビジネスの回し方、経営の意思決定プロセスやスピードを学びましたが、今振り返りますと、文化の違いを体感するという観点においても、あれが大変貴重な経験でした。
他方で、根底は人と人との繋がりですから、洋の東西を問わず、人格的な面が人間関係、ひいてはビジネス関係にもたらす影響は大きいと思います。「英語では、日本語のような敬語を含む(相対的に)複雑な言語体系は余り用いられない」ということもよく聞きますが、英語環境においても、自分の置かれた立場や交渉状況によっては適切な言葉の使い分けが求められるのは事実で、また、同じ米国でも東西において差異は大きく、そういった点も含めて、如何に地場のビジネス文化や慣習を理解するかが大変重要な要素であると感じています。
Q4. ご自身の体験から、アメリカで仕事をしていく上で何が重要なポイントだと思われますか?
A4.
先にも触れましたが、ビジネスにおいても、あるいはコミュニティにおいても同様ですが、人と人との関係を構築する上で、やはり根底にあるのは信頼関係だと思います。それは、いわゆる「もたれ合い」のようなものとは異質で、認め合う関係だと感じています。従って、勿論合理的なアプローチは重要ではあるものの、そこには相手に納得してもらえるだけの説得性を備えていることが重要であると思います。分からないことは素直に分からないと言う、相手に教えを請うべき状況では謙虚に耳を傾ける、といったことの積み重ねが、短期間であっても実りある人間関係を形成する上で重要であると考えています。その上で、理想的なビジネス関係としては、Give
&
Takeですので、自分が何かをGiveできるように、常日頃から研鑽を積むことも必要だと思います。アメリカでビジネスに携わる以上、英語を操ることはいわば基本でありますが、あくまでも英語という言語は情報・意思・考え方等を伝えるツールですから、要諦はその情報等の内容そのものです。その意味では、正しい日本語で正しい情報を蓄積しておくことの方が、遥かに重要であり、それが結局は互恵的な関係を公私に亙って築き上げてくれるものと信じています。
KDDI Labs USA,
Inc.のさらに詳しい事業活動、研究開発活動については下記のウエブサイトをご覧ください。www.kddilabs.com
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