Kanabo Logo
   
 
最新情報 米エリアIT通信
     
     
What's NewAFebruary, 2004

Market Snapshot - 米国のIT市場をみる
今月のテーマ: 研究所から企業へ−米国のグリッドコンピューティング事情 

国のIT業界における注目市場を月替わりで紹介する「Market Snapshot」では、市場の全体像やトレンドをわかりやすく説明。さらに役立つリンク集を活用すれば、該当市場や新製品に関するより具体的な情報も入手できます。当社では、特定の米国IT市場に関する調査をカスタマイズいたします。お問合わせは info@kanaboconsulting.com までどうぞ。

研究所から企業へ−米国のグリッドコンピューティング事情

今月のMarket Snapshotでは、その活用シーンを研究機関から企業などのビジネス領域へと移行し始めたグリッド・コンピューティングをテーマにお話しよう。従来、科学技術計算など膨大な数値演算作業を高速処理する際には、専用のハードウエアを導入する必要があった。その役割を担っていたのがスーパーコンピュータを利用したシステム構築であったが、専用機という性質上、一般的にかなり高価な技術投資とされてきた。このため、既存の技術を上手く利用することで、高価なハードウエアを導入せずに、スーパーコンピュータの作業を仮想的に実現できないか−という発想からグリッド・コンピューティング技術が誕生。数値演算作業を専門とする大掛かりなハードウエアを常設する替わりに、ネットワークに接続された多数の「眠っている」PCやサーバを通じ、必要性に応じて効率的に計算機能を利用する手法がそれである。概念そのものは新しくはないが、広く普及しつつある背景には:@近年、オフィスPCの処理速度はスーパーコンピュータのそれに近い性能を持つため、それらを集積させることで膨大な能力を発揮できること、A事務作業におけるPCやサーバの低い利用率に着目し、資源の効率利用を促進したことが挙げられる。これについてTowerGroupのDushyant Shahrawat氏(Securities & Capital Market Practice担当上級アナリスト)は、米国企業の社内におけるコンピュータ利用率は平均で35%〜40%程度と予測する。現在、グリッド・コンピューティングの産業規格についてはGlobus Toolkitを監督するGlobus Alliance(主に学術研究関係者、大小の技術会社が参加: www.globus.org )の他に、同技術とアプリケーションに関するオープンスタンダードの構築に取り組むGlobal Grid Forum(GGF: www.gridforum.org )が主体となって活動している。

本来、グリッド・コンピューティングは、膨大な計算能力を不可欠とする研究分野で発展してきた技術である。高エネルギー物理実験のデータやゲノム解析、半導体回路の最適設計、難病治療薬の開発等での実用例があるが、中でも米国では地球外生命体の探索プロジェクトSETI@home(Search for Extraterrestrial Intelligence)が広く知られている。研究志向型のグリッドは通常、オープンソースのソフトウエアと政府からの助成金を利用し、大学と研究所との協力によって実現される。その例として米国では、光ファイバを使い、40Gbit/秒の速度でコンピュータと5箇所の学術および研究機関を接続するTeraGrid( www.teragrid.com )プロジェクト等がある。

そして近年、同技術の活用範囲は学術研究の枠を越え、ビジネスの世界へと進展しつつある。ただ、ビジネスの領域においてグリッド・コンピューティングは未だ専門性の高い技術であるため、全ての企業が一様にその恩恵を受けるとは限らない。恐らく現時点では、金融サービス企業をはじめ製薬、大手の設計会社やメーカ(主に自動車や航空産業)など既に高性能のコンピューティング機能を利用している企業が最適な導入先であろう。金融サービス産業ひとつを例に採っても、業界アナリストらの予測では、グリッド・コンピューティングへの支出額が2008年までに48億9,000万ドルにも達するとされており、今後、さらに大きなビジネス機会が期待される。確かに、ハードウエアに比べれば安価とは言え、社内全体に導入してはじめて本領を発揮する技術である以上、企業の規模に応じて導入コストも肥大するのは必至である。しかし、秒単位で市場の変化に影響を受ける金融サービスなどタイムリーな業務処理が業績向上に直結する産業では、導入によるベネフィットがコストを凌ぐケースも少なくない。したがって、この点に真価を見出すか否かが、将来、エンタープライズにおける同技術導入の意思決定材料となるであろう。

企業におけるグリッドの導入は、通常:@上述のGlobus Alliance が提供するGlobus Toolkit(グリッド実現用ソフトウエアおよびサービスのセット)、Aグリッド市場を牽引する大手−IBM、HP、Sun Microsystemsの製品を利用するいずれかの方法で実行されている。また、こうした大手ベンダでは、グリッド向けミドルウエアを開発するソフトウエア各社とも提携関係を強化しながら、着実にそれぞれの市場地位を確立している。多様なハードウエア(デスクトップからワークステーション、サーバ、コンピュータ・クラスタ、メインフレーム等)に設置するソフトウエア・エージェントを手掛ける米国企業ではPlatform Computing、Avaki、DataSynapse、United Devices等が知られる。

Rising Company - Avaki社

Avaki(アバキ)

■創設時期:2001年

■ステータス:未公開企業

■所在地:15 New England Executive Park, Burlington, MA 01803

■連絡先:Tel: 781.272.3331 Fax: 781.272.8444

■URL:www.avaki.com

■従業員数:45名(2003年10月)

■経営陣: Tim Yeaton氏(社長兼CEO:Macromedia、Allaire、Compaq各社にて上級管理職を歴任するなど技術産業においては20年余りの経験を持つ)、Andrew Grimshaw氏(創設者およびCTO:The University of Virginiaのコンピュータサイエンス学部で教鞭を執りながら、1993年より同社の技術開発に携わる。Global Grid Forum(GGF)の創設メンバー)、Stephanos D. Bacon氏(VP, Engineering:前職のBroadvision、Object Design(現eXcelon Corporation)、Bachman Information Systems各社においてもエンジニアリング部門を主導)、Gary Phillips氏(SVP, Worldwide Sales and Services:Bowstreet、Interleafなど技術系企業において、特に海外市場を対象とした幅広い営業経験を持つ)他。

■最近の資金調達状況: 現在までの調達資金総額は2,000万ドル余り。2003年2月に完了したシリーズAラウンドでは、Polaris Venture PartnersおよびGeneral CatalystのリードにSofinnova Partnersが参加する形で420万ドルを調達。この資金は、ライフサイエンスをはじめ製造、石油/ガス、金融サービス等の産業をターゲットとた市場拡大に運用されている。2003年第一四半期の時点で発表されたクライアントの数は12件。また、Yeaton氏(CEO)によると、具体的な売上高は公表されていないものの、昨年内に収益黒字に到達している。

■事業概要および製品の特長: マサチューセッツ州に本拠を置く、Enterprise Information Integrationソフトウエア(以下:EII)の大手プロバイダ。EIIは、これまで科学技術産業等の研究分野で広く活用されてきたグリッド技術の概念を、ビジネスの世界に応用したもの。企業における各種情報を社内のみならず、顧客やビジネスパートナーなど社外のユーザとも時間や場所、フォーマットの種類に関係なく共有できる環境を創る技術である。

主力製品Avaki Data Gridは、LinuxをはじめUNIXやWindows等のOSに依存することなく、分散格納された最新のリソース(データ資源や計算資源等)をリアルタイムで共有し、有効活用するためのミドルウエアである。接続にはVPNが使用され、ユーザは単一のIDとパスワードで認証を行えるため、必要な情報へ複数の拠点や部署から容易にアクセスすることができる。こうした環境整備により、企業では、ネットワークやストレージの維持管理費用は然ることながら、業務に要する時間の短縮など組織全体において大幅な効率化を図ることが可能になる。

BEA SystemsやComposite、Journeeなど競合製品と大きく違う点は、分散クエリーではなく分散データグリッドへの注力にある。Avaki製品は、データグリッドにおけるコンピュータサイエンスの概念に基づき、組織内のコンピューティング・リソースを指定する点で他社と差別化を図っている。オンザフライで膨大なデータセットへの分散処理を行えるため、結果的により多くのデータ資源からより大量の情報を入手できる。これが同製品の強みであり、IBMやHP、Sunといった巨大企業からデータ統合に特化した中小規模の専門サービス企業に至るまで様々なチャンネルパートナーとの関係を構築する結果にもなった。2003年4月に開催されたBio-IT World Conference & Expoでは「Avaki Data Grid 3.0」がITインフラ部門においてBest of Showを獲得。同年、2003 Frost & Sullivan Healthcare Information Technology Innovation Awardも受賞した。Network World誌のTop Ten Start-ups to Watch for 2003に挙げられた企業である。  

過去の掲載記事

 

 

 

ニュースレターアーカイブ
過去に掲載した週刊ニュースレター「米エリアIT通信」の記事が閲覧できます。

ニュースレター無料購読
米エリア IT通信
シリコンバレーを中心とした「ベイエリア」のテクノロジー事情や、米国内の注目IT市場を月替りで検証。それぞれのIT市場で活躍する企業(公開または非公開)も併せて紹介。また、テクノロジー業界のエグゼクティブや企業へのインタビューを通じて、日米間の最新ビジネス状況も把握できます。短時間で米国の最新IT事情を読みたい方には、週刊ニュースレター「米エリアIT通信」の購読をお薦めします。購読は無料です。

This Month's Bridge Builder
Featuring the real voice of IT across the Pacific

February, 2004 

技術に対する高い関心を言葉で表現

Nikon Precision Inc.          Technical Translator, William Clemens氏

「翻訳者」から連想されるイメージは、外国語における高い語学力を持つ人、外国語学習に関心のある人、海外居住経験を通じてその国の言葉と文化に詳しい人など、受け手によって異なるに違いない。しかし、言語をコミュニケーションの手段と捉えれば、翻訳者は「道具としての言語を上手に活用できる人」と定義されるのが妥当かもしれない。業種に関係なく道具を使って何かを生み出す仕事であれば、成果物の完成度は道具の質に影響を受けるところが大きい。つまり、これを翻訳者の場合で言うと、外国語に精通しているのは根本的な事であるが、それをいかに上手く母国語で伝えていけるかが最も大切な事ではないだろうか。しかも言語は、時代や環境と共に変化するものであるため、特に専門分野における翻訳者は日々、新しい知識を蓄積してその「道具」を磨く必要がある。今回のBridge Builderでは、Nikon Precision Inc.にて技術翻訳を担当されているWilliam Clemens氏に伺った翻訳の話をご紹介したい。

Q. 日本でお仕事をされていた時の経験をお聞かせいただけますか?

A. 日本へ行った元々のきっかけは、アメリカで大学を卒業した後、JET Program(Japan Exchange & Teaching :語学指導等を行う外国青年招致事業)を通じて中学校の英語教師になったことでした。確かに最初の2年間はいろいろな意味で大変さを感じましたが、その後は自分自身でなんとかやりのけ、非常に有意義な時間を送りました。その結果、一年間滞在する当初の予定が7年余りに延びたというわけです。

Q. 技術分野での翻訳業務に携わっておられますが、その背景について教えてください。

A. 翻訳の仕事は、日本に住んで数年経ったあたりから始めました。日本語を学習しながら収入も得られる、いわば一石二鳥の仕事だと思ったのですが、協力できる技術分野の専門家が身近にいなかった最初の頃は、結構難しいと感じましたね。技術翻訳を仕事としてやっていくには、それ相応のリサーチと読解量を必要としますが、やはり自分自身、技術の研究そのものに関心が高いということが、現在の仕事に繋がっていると思います。

Q. バイリンガルとして、翻訳の他に社内では通訳や会議の司会などの業務をされる事もありますか?

A. そうですね。会議やコンファレンス等で通訳の仕事をする機会もありますし、社内では、業務上必要な日本語の技術用語や、逆に英語での言い回しについて助言を求められる事は多々あります。勿論、会社の性質上、技術面における進展や成果に関心が集中しがちではありますが、翻訳者としての私自身の役割を重要だと認識している社員も多いと思います。

Q. 市場に出回っているTradosや機械翻訳など様々な翻訳ツールについて、どう思われますか?

A. 社内で使っているTradosは、生産性の向上面において役立っています。しかし、飽くまでもひとつの道具に過ぎないので、それだけで完璧に作業をこなせるものではありません。やはり根本的には翻訳内容の正確性と専門用語の統一性を遵守するよう、社内全体を通してきちんとした品質管理システムを整備することが大切です。そうなると、翻訳ツール等の機械翻訳などでは限界があるんですよね。ですから、Toradosのような翻訳ツールの有用性を最大限に引き出すには、何よりも統一性を尊重しながら翻訳作業を進めていくことが重要です。例えば、Wordで文書を作成する人もあれば、それと基本的に同様の内容をエンジニアがExcelで書くとなると、Tradosを使ってもそれほど作業の手間は省けませんから。

Q. ご自身の経験と才能を活かしながら、将来はどのようなキャリアを目指していらっしゃいますか?

A. 元々、翻訳に携わる人間は、得てして独立型のキャリアスタイルに従う傾向がありますから、キャリアの方向性は千差万別だと思う私にとっては、合っていると思います。 Nikon Precision Inc.に関する詳しい情報は http://www.nikonprecision.com/  をご覧ください 。 

前回までのインタビュー

Upcoming Events,

Growing Your Solutions Business: Developing, Marketing, and Selling Integrated Solutions
2004年4月13日〜14日, San Francisco Marriott カリフォルニア州サンフランシスコ

市場機会が期待される統合型ソリューションの開発、販売促進戦略等に関するワークショップ形式のイベント。

Wireless Security Forum
2004年4月19日〜21日, Santa Clara Convention Center カリフォルニア州サンタクララ

無線ネットワークや各種アプリケーションの設計、開発、導入、管理に関連した様々なセキュリティ問題に焦点を当てたイベント。

Strategic Uses of Information Technology
2004年4月25日〜30日, Stanford University カリフォルニア州スタンフォード

一週間のカリキュラムは、価値創造のためのIT利用法や成功例の紹介、企業組織でのITに関連した諸問題とその解決策等のトピックで構成されている。

Grid Computing for your Enterprise
2004年5月6日〜7日, Wyndham Baltimore メリーランド州バルティモア

ビジネスを対象としたグリッドコンピューティング技術をテーマに、産業標準の動向や導入における利点/リスク、成功事例等を紹介していく。

 

広告掲載
週刊ニュースレター「米エリアIT通信」は、最新のテクノロジーやIT業界にアンテナを張った購読者へのオンライン・サービスです。広告掲載に関するお問合わせはadvertise@kanaboconsulting.comまでどうぞ。

HOME | ABOUT US | SERVICES | NEWSLETTER | CONTACT US | ENGLISH

Copyright © 2004, Kanabo Consulting, Inc. All rights reserved.